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2006.10.07

ライター追記@『風の前奏曲』

お疲れ様です。Reikoです。

トレキャ!シネマ番付(06.10.07号)に掲載のコラム
風の前奏曲』<タイ編>」へのライター追記です。
(コラム本編は本日配信の上記メルマガでお読みいただけます。)

インターネットでいろいろ調べてみたところ、
アヌチット君のあの神業のような演奏は、撮影前の
8ヵ月間と撮影に入ってからも毎日、先生について
習得したものだそうですが、あの超絶テクは凄過ぎ…。

映画の中で、彼が演じたソーンは、
ラナートを中心とするタイの伝統楽器アンサンブルの
指導者として名高い父を持ち、兄もラナート奏者。
ソーン自身、ラナートに初めて触れた日(3歳位)から
並々ならぬ才能の片鱗を示し、父や兄を驚かせます。

このアンサンブルは、数グループが参加する大会を開き、
優勝者を決めるのではなく、なぜか、いつも1対1の
対決で勝敗を争います。それはもう名誉をかけた真剣勝負。
で、ソーンが音楽家になろうと心に決めた矢先、常勝楽団の
花形演奏者であった兄が、実力で劣る競合楽団の関係者
らしき何者かに殺されてしまいます。
この一件でソーンの父は、ラナートも巻き上げ、弟子や
息子にも楽器演奏を一切禁じます。
このお父さん役がまた味わい深い、抑えたいい演技を
するんですよ。

この映画、脇を固める役者さんのレベルが

ものすごく高くて、びっくりです。タイの芸能界に
詳しい方にとっては、きっと、「そうそうたるメンバー
が揃ってるから当然」なのかもしれませんが、
脇役に徹しつつも、与えられた役柄のキャラが立つよう、
さりげなくもきっちり演じていて、ほんとに上手い。
こうしたベテランの助演があるからこそ、
アヌチット君の持つ若々しくも確かな演技力が一層
引き立つのだと思います。

出演シーンは短いのに記憶に残る人が多くて、とても
コメントしきれないんですが、我が家で一番人気が
あったのは、「酔っ払い師父」こと、ソーンが大抜擢
された王室お抱え楽団の最高指導者。もう、ただの
酔っ払いおじさんにしか見えない日常と、御前に
まみえる時のギャップがあり過ぎて、同じ人物だとは
思えません。でもソーンの型破りとも言える手法も
認めた上で、的確なアドバイスをしたり、
弟子を信頼して、時が熟すのを待ってくれたり、
私の持つ「師父」のイメージにぴったり。

あと、自身満々だった若き日のソーンが初めて挫折を
味わうきっかけとなり、その人との対決をひたすら恐れた
ラナート演奏の大家、「嵐を呼ぶ男」(笑)クンイン。
これを演じた方は、本職がラナートの師匠なんですが、
この人の存在感がとにかくすごい。ソーンがいくら
お酒を飲んでも、恐れや慄きを振り払えないのも、
ラナート教室に、楽団員役のキャスティングに行った
監督が、演技は素人のはずの、この師匠に
あれほど重要な役を振ってしまったのも納得です。
 
タイの歴史を知らない私(そして伝統音楽や文化を
愛した当時のタイ人一般)にとって、理解に苦しんだ
のが、ソーンの最晩年に訪れたタイ版の「文革」です。
これ、日本でいくと、「脱亜入欧」「文明開花」という
ことになると思うんですが、タイでそれが起きたのが
1940~50年なんですね。列強の侵略を恐れた当時の
軍事政権が、「タイはおいそれと植民地化していい
未開の土地ではなく、西欧同様の文化を持つ国であると
アピールしたいがために、タイの伝統文化を排斥し、
西欧文化を根づかせようと、新しい規則を作っては、
大衆を厳しく取締った」ということなんですが、
これって、ほ~んと、わけわかんなくないですか?
だって、自国の伝統文化を西洋文化に匹敵するものと
位置付けられないんじゃ、最初から負けを認めている
ようなものでしょ?
しかも40年前後って、日本が「大東亜共栄圏」を掲げて、
アジア各国に進出していった時じゃ、ありません?
タイは植民地化こそ免れたけど、結局、日本軍が自国内を
進軍するのを認めざるを得なかったのに、「鬼畜米英」と
言ってる日本軍政下で、西欧化を進めるってどういうこと?
と、私の頭はいまだ混乱状態なんですが、
タイ版の文化大革命の内容について興味のある方は、
『風の前奏曲』関連のウェブサイト
タイ芸能ライターの白田麻子さんが、
ウィチャイラック監督にインタビューをなさった時の
記事(この映画の撮影裏話も満載)に、とても詳しく
書かれていますので、ぜひ、そちらをご覧ください。
 
余談ですが、毎年のようにコンサートで新たな楽器演奏に
挑戦している、我が愛しの藤木直人に次回はぜひ、
このラナートに挑戦してほしい(笑)私でございます。

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