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2008.09.29

イスラム教徒の恋愛を描く『Ayat Ayat Cinta(アヤアヤ・チンタ)』

REIKOです。
 
今回は、インドネシアで今年最も話題を集めた映画
Ayat Ayat Cinta(アヤアヤ・チンタ) 』をご紹介します。

原作が同国のベストセラー小説ということで、制作段階から既に注目されていた
この映画、2月28日の封切り後1ヵ月余りで350万人を動員する大ヒットとなり、
近隣のマレーシアやシンガポールでも公開されました。

このタイトルには、『愛の詩』とも『愛の証』とも訳せる、なかなか深遠で微妙な
ニュアンスがあるのですが、イスラム教徒が主役とはいえ、国際的に評価の高い
イランの文芸作品などと比べると、わかりやすいかな?
あ、わかりやすいと言っても、登場人物の言動にしろ場面の設定や演出にしろ、
未だに「?」だらけですけどね、私の場合(笑)。
 
以下、ネタバレご容赦ください。

主人公のファーリは、奨学金でエジプトの大学に留学しているインドネシア人で、
イスラムの教えを深く理解するだけでなく、それを実践に移し、全ての人に平等
に思いやりを持って接する模範的な好青年。頭脳明晰、弁舌さわやか(といっても、
ただの口先男ではなく、勇気と行動の人でもある)、担当教授の覚えもめでたく、
良い友達にも恵まれ、長身で、(妻夫木君のインドネシア版とでも言えそうな)
優しい顔立ちのイケメンでいながら、自分のルックスの良さに気づいていない…と、
もう「ありえな~い」(笑)くらい理想的な彼、当然モテるわけです。

留学生仲間と一緒に下宿しているアパートの上の階には、エジプト人のキリスト教
徒、マリアが住んでいて、何かと力になってくれるのですが、彼女がファーリに抱い
た好感や敬慕の念は愛に変わっていきます。
一方のファーリは、マリアの想いには気づきません。

ある日、地下鉄で熱気にあてられた米国人女性に席を譲ろうとして、頑迷なエジプト
人男性に言いがかりを付けられていたドイツ系トルコ人女性、アイシャをファーリが
助けます。そして彼は、アイシャと電撃的な恋に落ち、あっという間に結婚。

ところが、以前にファーリがマリアと協力して助けたノゥラという女性も彼に恋心を
抱いていて、自分の想いに応えてくれないファーリを逆恨みして、彼に「強姦者」の
濡れ衣を着せます。

逮捕されたファーリを救おうと東奔西走するアイシャは、「理想の男性」と信じ結婚
した夫のことをほとんど知らなかった自分に気づくのです。
一方のマリアは、ノゥラに暴力を振るっていた彼女の養父の策略で、重傷を負います。
アイシャは、マリアがファーリを失った心痛から衰弱し、意識が戻らない状態にある
ことを知ります。夫の
身の潔白を証明してもらうためにマリアの力がどうしても必要だと考えたアイシャは、
マリアを第2夫人に迎えるよう、ファーリを説得します。

なかなかすごい展開でしょう?
物語は軽快にスタートしますが、ファーリが学究生活と世俗的な問題との間で悩ん
だり、冤罪で逮捕され「自分は一体どんな間違いを犯したのか」と自問したり、
2人の妻との気まずい同居生活を送る中で、イスラム教徒として成長していく--
という、かなり骨太なテーマを持つ映画です。

ミュージシャン、モデル、MTVのVJ(ビデオジョッキー)などを兼業する若手俳優達
がなかなか好演しており、映像も刑務所と裁判所の場面以外は、暗過ぎず明る過
ぎず美しく、「作り物」のあざとさがない分、リアリティが感じられました。
その点、ウチの息子達の学校で話題になったインドネシアのTVドラマの大げさでわ
ざとらしい感じとは雲泥の差です。

でも、あの刑務所と裁判所の設定と演出は「…???」でしたね。
ジャカルタ深読み日記』という
大変興味深いブログでは、「このあたりは、中東に出稼ぎに行ったインドネシア人
労働者の経験を参考にしていたりするのだろうか」とコメントされていて、
「あ~、そういう見方もありかな」とは思ったのですが、それにしても、エジプトを
あんな前近代的な制度を持つ国と描いちゃって、大丈夫だったんでしょうか?

他にも、エジプト人男性は、重い荷物を妻や娘に運ばせ、自分は手ぶら、何かという
と女性を「この売女!」と呼び、すぐ暴力を振るう--と描いていましたが、この辺、
外交上問題はなかったのか、映画館を貸し切りにし、各国の大使を招いてこの映画を
鑑賞したインドネシアの大統領に聞いてみたい気もします。

余談ですが、
故アニタ・ムイ(香港の女優)と元宝塚の純名りさが妻と愛人という役柄で共演した、
私の長い人生(笑)で観た最も後味の悪い映画(すみません。タイトルは忘れました)
は、モロッコが舞台でしたが、
そこで描かれたモロッコと、この『Ayat Ayat Cinta』で描かれたエジプトって、
私のように彼の国の実情を知らない人間には「やだ~!こわ~い!」という印象を
与えちゃう点で、いい勝負だと思います。

ま、こうした欠点はありますが、なかなか色々なことを考えさせられる映画です。
あっ!そうだ!これ、ウチの超お人よし息子にもちゃんと見せとかないと!
人に親切にして、モテるのは結構だけど、
「世の中、性悪女や図々しい男もいるから気をつけなさい」という教訓も含めて…
本当は、そんなせちがらいこと言いたくないですけどね。


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