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2010.03.27

ライター追記@『My Name is Khan』

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
★ 海外発コラム★  『My Name is Khan(インド編)』
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
                                  TEXT by Reiko

 トレキャ!シネマ番付(2010.03.29号)に掲載のコラム
 『My Name is Khan』のライター追記です。
(コラム本編は上記メルマガでお読みいただけます)

                    ◆

■「江戸の町娘」的キャラが人気のカジョール

主人公リズワンが恋に落ちるヒンズー教徒のシングルマザー、マンディラ役
のカジョールにはずっと
「気さくで快活、機転も利く。情にもろくて、世話好きで町内の人気者。
でも、鼻っ柱も強くて、ちょっとおっちょこちょい」
な江戸の町娘的イメージを持っていました。
  
実際、気は強いみたいですね、彼女。私の記憶が定かなら、海外の舞台の
楽屋で、彼女の熱烈なファンだったバックダンサーからサインを求められ、
「(貴方もプロでしょ?)ばかばかしい」
みたいな返答をしたことがあったんじゃないでしょうか。
それで「カジョールは何様のつもり?」とか「サインぐらいしてやれ」と話題に
なったと思うんですが、どなたか覚えていらっしゃいませんか?

ま、ボリウッドの超人気女優にもかかわらず、カジョールにはどこか
「姐さん、江戸っ子かい?」と訊きたくなる(爆)、溌剌とした印象があるのです。

彼女には日本人ファンも多く、「遠目にも目鼻立ちがくっきり分かる美人」、
「でも、なぜか眉毛は『こち亀』の両さん風(笑)。それでもやっぱり美しい」
といった記述もありました。

確かにパーツのはっきりした濃い顔なんですが、
町娘のカツラや着物、意外と似合うんじゃないかと思います。
少なくとも、アイシャワリャ・ライより、違和感はないはず(笑。自分でも、
どうしてインド人に江戸時代の髪型や着物のコスプレをさせたいのか、
わかりませんが...)。

実は、カジョールを描写する形容詞として浮かんだ「おきゃんな」という言葉、
「既に死語かも...」という気がしたので、念のためネット検索してみたところ、
ある女性がやはりカジョールを表して、この言葉を使っていて、
つい親近感を覚えてしまいました(笑)。

でも、この方はカジョールを「日本でいうなら吉永小百合に相当する往年の
人気女優」と例えていたので、驚きました。

だってカジョールはまだ34歳ですよ~!10代後半でデビューするなり、
絶大な人気を集め、大ヒット映画に何本も出演しているのと、結婚を機に
出演作品を極端に絞っているせいで、私も「若く見えるけど、実年齢は
もう少し上かな?」と思っていましたが、「往年の」はあんまりです(苦笑)。

そうそう、カジョールはインド女性の間でも圧倒的な支持を集めており、
今年の国際女性デー(3月8日)に、同国のある結婚仲介サイトが25万人
の同国女性を対象に行った「息子の嫁にしたい女性」アンケートでは
43%と圧倒的な得票率で第1位に輝いたそうです。

公開されたばかりの『MNIK』で見せた母親の顔、明るくて気丈なイメージ、
実生活でも子供と過ごす時間を優先していることなどが、決め手になった
のではないかと思います。


■ヒンズー教至上主義右翼政党の暴挙

シネマ番付のコラム本文に「ヒンズー教至上主義政党シブ・セナが
ムンバイ市内での『マイ・ネーム・イズ・カーン(MNIK)』の封切りに
抗議し、道路封鎖や投石といった示威行為に出た」と書きましたが、
このシブ・セナという政党とそのシンパは「ヒンズー教の価値観と
モラルの擁護」を大義名分に、イスラム教徒、隣国パキスタン、欧米
文化を敵視するだけでなく、女性の地位向上やエイズの拡大防止に
取り組む団体まで、ありとあらゆる難癖をつけて、批判、脅迫、攻撃
を繰り返す偏狭なショービニスト(狂信的愛国+性差別主義者)の集団です。

シブ・セナとは「シヴァジー(1674年マラータ王国を興し、ムガール帝国に
抵抗したマラータ族の英雄)軍団」という意味で、1995年の選挙で、
インド中西部のマラシュトラ州とその州都ボンベイを掌握してから、
民族間の対立を煽ったり、映画館、コンサート会場への攻撃、検閲、
表現者に対する脅迫を駆使し、芸術や娯楽を求める大衆から楽しみを
奪ったりと、好き放題なのです。

今回の『MNIK』上映館襲撃については日本でもずいぶん大きく報道
されたようですが、実はシブ・セナが特定映画の上映を阻止しようと
したのは、これが初めてではありません。

カナダ在住のインド系女性、ディーパ・メータ監督の『ファイアー』
はそれまで32ヵ国で上映され、14もの賞を受賞していましたが、
愛のない結婚生活を送る義理の姉妹が、互いを支え合ううちに、
愛し合い、肉体関係を結ぶようになるというストーリーがシブ・セナ
に「猥褻なポルノ映画」と決めつけられ、様々な圧力をかけられたの
です。でも同監督が描こうとしたのは、現代インドであり、孤独で
あり、男性への隷属を拒否する自立した女性の出現だったと言います。

『ファイアー』の上映にシブ・セナが横槍を入れた、この一件(詳しく
こちら
には、それまでシブ・セナの野蛮な言動にひるんでいたインド映画界
も遂に黙っていられなくなり、メータ監督と2人の主演女優への連帯
を示したそうです。

今回のシャルク・カーンと『MNIK』に対する抗議行動は、映画の内容に
対してというより、先祖がパキスタンから移住したイスラム教徒の
シャルク(+アミールとサルマンの「偉大な3カーン」)が、ヒンズー
教徒が多数派を占めるインドで絶大な人気を誇っていること、
インド人が熱狂するクリケットの今季リーグにパキスタン出身選手が
1人も採用されなかったことに対し、シャルクが「残念」と発言した
ことが、単に面白くないからという理由のように思われます。

でも、シブ・セナの根拠薄弱な暴れん坊ぶりにはもううんざりという
映画人やファン達は、事件に巻き込まれる危険も顧みず、シャルクや
ジョハール監督への連帯を示し、映画館へ足を運んだとか。

シブ・セナは、性産業従事者のエイズ予防に取り組んでいる社会活動
団体SANGRAMと、性産業に従事する女性達の協同体VAMPに所属する
活動家達に対しても、地元警察幹部と組んで、強姦や殺害の脅迫を
行ったことがあるそうですから、政党というのは名ばかりで、単なる
ゴロツキ集団ですね、もはや。
(参考: http://home.interlink.or.jp/~reflect/WIBTokyo/press0239.html )

ネット検索すると、同じヒンズー教徒からも「こいつらがやってるのは
宗教に名を借りた売名行為」「自身の利益のために国を分断させようと
している。ある意味、テロリストと同じ」という批判が出ており、勢力
にも陰りが見えるようなので、少し安心しました。
(参考: http://ameblo.jp/piroperi/entry-10386956822.html  )


■ボリウッド映画を世界に通用させる条件

『MNIK』は2月12日の封切り以降、英語圏やイスラム圏だけでなく、
現地語(ドイツ語やポーランド語など)での字幕付き上映が続々と決定し、
3月18日現在、3900万米ドル(うち1700万米ドルは国外収入)をたたき出す
世界的ヒットとなりました。

シャルクは以前、「インド映画は長いので、ほとんど観ない」と言って
いたと記憶していますし、共同プロデューサーを務めた『MNIK』に
ついても当初は世界市場を視野に入れて制作したり、PRしたりする
必要性が本当にあるのかと思っていたそうです。

でもムンバイで行われたメディア&娯楽関係の会議では
「インドの映画制作者はハリウッドの映画様式を理解し、インド独自の
コテコテで頑固な物語に固執すべきではない」「映画の脚本作りは
芸術形式ではなく、一種の科学であり技術なのだとわが国の映画会社が
気付くのが早いほど、ボリウッド映画の成長も早まる」と語っています。

一方、ジョハール監督は「ボリウッド映画の脚本は依然として粗雑」
と述べ、『スラムドッグ$ミリオネア』に出演したイルファン・カーンは
「もし『スラムドッグ~』の編集がインドで行われていたとしたら、
あれだけ話題を集めたり、高い評価を得ることはなかったと思う」
「インドの主流映画は素晴らしいし、独特の感情表現という点でも
優れているが、人生の複雑な様相や複雑なキャラクターは歓迎され
ない。その点を改善する必要がある」と指摘しています。

ボリウッド映画に欠かせないダンスシーンも私は大好きですが、
時には「もう踊りはそれくらいにして、そろそろ話進めようよ」と
言いたくなります。だから、ボリウッド映画には

(1)ストーリーにほとんど関連なく、フルコーラスで何度も挿入される、
  あの唐突なダンスシーンを半分くらいに減らすこと、

(2)「ボリウッド映画のヒーローは銃撃されても、タンクに轢かれても
  死なない」と笑い話になるほど、現実離れしたアクションシーンを
  もっとリアルなものにすること、

(3)男優はジムで身体を鍛えるだけでなく、演技力も同じくらいの
  熱意を持って磨いて欲しい-

というのが、私の要望です。


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